“皮”から“革”へ
第1回目のコラムのテーマは、“革とは?”です。
古来より人々は、狩りをして食べた後の動物の毛皮や皮を加工して、寒さや衝撃から身を守ったり、物を運ぶのに利用してきました。
【かわ】というと、“皮”と書くのか?“革”と書くのか?迷う、もしくはどちらか気にせず使われている方も多いかと思います。
動物から剥がれた状態のモノを“皮”と書き、それを簡単に言うと“腐らないような状態”つまり製品として使えるようにしたモノを“革”と書きます。
その技術のことを【鞣し】と言い、『皮のままでは腐敗したり、水分が抜けて硬くなってしまうのを防ぐため、コラーゲン繊維に“なめし剤”を結合させ、安定した素材“革”に変化させること』で、読んで字のごとく【革】を【柔】らかくすると書きます。
少しそれますが、この辺りの漢字の成り立ちなんかが私は好きで、例えば【鞄】という字は、【革】で【包】むと書き、銀座の老舗鞄店の創業者の方が作った言葉だそうです。本質をついた言葉ですね。
『“革”とは何かを“包む”モノ。』私自身、モノをツクる時はこれを根っこに据えて、本質からズレてないか?と自問自答しながら手を動かすようにしています。
話を【鞣し】に戻して、その技術の始まりは、皮を人が噛んで唾液と混ぜながら柔らかくし、煙で燻す方法だったと言われています。旧石器時代(約200万年前)頃にはすでに存在し、鞣すための道具などが遺跡から見つかっているそうです。
その後、鞣しの技術の発展とともに衣類や履き物・入れ物など、革は人々の暮らしに欠かせないものとなっていきました。
私は革の匂いを嗅ぐとなんだか落ち着いた気持ちになります。長い歴史の中で親しまれてきたこの素材の何かしらが、DNAに組み込まれているのだろうか?などと思ったりします。
現代では“鞣し”は様々な方法があります。そしてその技を持つ人たちのことを【タンナー】といい、先述の“なめし剤”の調合はタンナーごとにオリジナリティがあり、それぞれの特徴となっています。
私は良い革は、“永く持つ”ことが条件だと思います。オイルの具合、染色の仕上がり、風合い…などなど、同じ牛革でもピンからキリまで様々ある中で、素材として劣化せずに保つことができるか?はひとつの判断材料になります。(※鞣し方によっても判断のポイントは若干異なってきます。)
などと、ひとえに“革”といってもその種類や見るポイントは様々で、私もたまに「よく分からん!」となることもありますw
なので、店頭などで革製品をお求めの際は、難しく考えずに実際に見て触れたりして、なんとなくフィーリングがあったり、そばにプロがいる時は話したりしてみながら、“ワクワクしたら買ってみる”で良いのではないかと思います。
使ってみて、その革のファンになったら今度は他のアイテムを手にとってみる______。違ったらまた別のモノを探して使ってみる______。そうやってご自身の“スタイル”や“好み”を確立していくことが今の時代のひとつの買い物のカタチかと私は思います。
HIDA代表 革職人 日髙聡生
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